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襖絵のSOHO

SOHO in Kiyosumishirakawa

knofの自宅兼事務所。

3方向に江東運河を望む築33年の中古マンションを購入し、4LDKだった住戸を職住を一体とするワンルームにフルスケルトンリノベーションした。

 

暮らしと仕事を分けるのではなく重ね合わせて使うことを企図し、その結果としてあらわれた9枚の建具を襖絵のキャンバスのように扱った。

用途|住宅
敷地|東京都江東区
構造|RC造/既存建物
延床面積|77.04㎡
設計期間|2017.4-2017.6
工事期間|2017.6-2017.8

設計・アートディレクション|knof
施工|株式会社M-CUBE
施工担当者|鈴木學
襖絵原画|池田早秋 ▶︎web
襖絵印刷|金羊社 ▶︎web
テーブル製作|WOODWORK ▶︎web
写真|児玉晴希 ▶︎web

奥行きについて

南・西・北の3方向に運河を望む築33年の中古マンション。もとは4LDKだった住戸を、職住を一体とするワンルームにリノベーションした。

 

自宅兼事務所という用途を考えると、80㎡ほどの限られた面積を明確に二分してしまうことは住まい手/働き手の活動範囲を狭めてしまう。「住む」と「働く」が重なり合う領域を最大化できるプランを模索した結果、オフィスから寝室までゆるやかにひとつながりのワンルームとなった。

大部分がオフィスとしての振る舞いをする以上、生活感の出る要素(風呂、洗面所、WIC、小説やマンガなど)は積極的に見せたくはない。それらを窓のない壁側にまとめて配置した結果、ワンルームを横断する9枚の連続した建具が現れた。9枚の連続した建具はパブリックとプライベートを分ける実際的な扉の集合でありながらも、全体として室内を横断する比率4:1の横長のスクリーンにも見える。このスクリーンをどう扱うか。

 

長谷川等伯の松林図屏風に対峙すると、自分が絵の中の霧がかった空間と地続きに居るように感じられる。襖絵や屏風絵などの障壁画は、その大きさ、および描かれているシーンと鑑賞者の想像力の相互作用によって、xyz軸とは異なる「位相のずれた奥行き」を生み出すことがある。日本の障壁画文化には、その発展とともに人々の想像力をもって空間を行ったり来たりする、拡張現実的な奥行き感を獲得してきた側面があると考えている。

 

ここでは、前述の9枚の連続した建具を襖絵のキャンバスとして扱った。都市の中のマンションの一室というコンクリートの箱の中に、新たな奥行きをつくり出したい。

人の生活空間とはかけ離れたスケールへの興味、運河との取り合わせから鯨をモチーフに決め、図案をアーティストの池田早秋さんに依頼した。ドローイングペンで緻密に描かれた幅40cmほどの原画を拡大し、特殊大型プリンターを使って直接ラワン合板に印刷した。新木場の倉庫で選定したラワンは木目も色味も荒れており普段の現場では喜ばれないものではあるが、ここでは荒れた木目を波に見立てた。

窓の外に広がる運河と襖絵の鯨との関係は、ちょうど塔頭の方丈における庭と襖絵の関係と同様で、挟み込まれた鑑賞者(=住まい手/働き手)は空間の往来を繰り返し、現実と想像のそれぞれの奥行きを漂流するのである。

 

この襖絵のキャンバス(建具の障子部分)は、本来の襖に倣って住まい手が交換可能なつくりとした。例えば四君子苑の襖は、夏に簾戸に衣替えすることで空間の装いを全く変容させてしまう。キャンバス部分を交換することで、また別の奥行きを体験することを可能にした。