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左岸の家
HOUSE RIVE GAUCHE|House in Koto-ku, TOKYO

永代橋の近く、江東運河とその先に隅田川を越えて都心を臨む、抜けのある敷地。
この立地も手伝って「土手」をイメージソースとして計画をスタート、クライアントと侃々諤々つくりあげた。

誰でも、土手で過ごした何か特別な記憶やイメージをひとつは持っていて、その心地よさは共有されやすいもののように思う。しかし本来、土手には河川の氾濫を止める以外の目的は無かったはずで、土木技術的に決められたであろうその勾配は人間にとっては急すぎる。でも登れなくもないし、登りたくなる、気に入ったところで腰を降ろしたくなる。目の前には川があってその向こうには対岸があって、それを眺めている。人が過ごすための機能が想定されていないからこそ逆に、土手にはいろいろな営為が生まれている。そういうことをイメージしながら、施工及びコストから決まった最大ボリュームに、土手のような斜面を折り畳んで流し込むような構成をつくれないかと考えた。

実際的には、法規的に階として参入されない「階段」を土手の斜面としてスケールを大きくし、逆にフラットな床面は踊場のような階段に近い存在にすることで、床と階段の主従を無くした。すると階段は、本来の目的である「上下移動のためのもの」というよりはただの斜面に近い存在になり、アクティビティは床から斜面にまで拡張され、結果として75㎡とは思えない生活空間の多様な広がりを獲得できた。 
ボリュームに土手を立体的に流し込む過程で、斜面と斜面のあいだに「やぶれ」たような界面ができた。斜面がつながっていく方向とは別に、壁が裂けて別の空間と隣合わせになっているような状況は、実際の寸法以上の奥行きを生み出す。外壁面の開口部も「やぶれ」の延長として扱い、景色の抜けや広がりを最大限感じられるように配置した。

 

柱はH-100×100として柱型の無い内部空間を最大限確保。ブレース構造で固めた直方体の短辺方向に、複雑な断面の変化に追随するようにクランク梁をかける構成として床と階段を形成。(構造フレーム図参照)

LiVES vol.119 ▶︎web

左岸の家

施主|NandA  ▶️instagram
場所|東京都江東区
用途|住宅兼オフィス、貸店舗
階数|地上3階建
構造規模|鉄骨造 耐火建築物
敷地面積|40.38㎡
建築面積|34.90㎡
延床面積|106.12㎡
    (住宅75.60㎡ 店舗30.52㎡)

 

設計監理|knof
構造設計|OUVI 木佐美慶太
施工|ダブルボックス ▶️web
ローンマネジメント|創造系不動産 ▶️web
 担当|本山哲也
設計期間|2018.12-2020.3
施工期間|2020.3-2020.12

 

写真|児玉晴希 ▶️web

ダイニングテーブルなど家具|鈴木亮佑+高山左官
1Fテナント|ほんとうにおいしいコーヒー

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